弾塑性体の材料力学について(その一)

概要

論文の詳細を見る
軟鋼のように十分延性がある梁が曲げおよび軸力を受ける場合,その設計に際して従来の弾性設計若しくは極限設計を適用するよりも最大弾塑性応力又は歪を許容値以内に制限する塑性応力設計又は塑性歪設計の適用の方がより合理的であると考えられる。然しこの方法が従来あまり使用されていないのはまず塑性域における応力〜歪関係式をどのような形で実用計算にとり入れ,弾性計算にもとづく従来の梁の材料力学のような使い易い設計法にするかについての研究が未だ不十分であるためであると考えられる。その原因の一つとして塑性域における応力〜歪間の非線型的関係従つて曲げモーメント,軸力対曲率,平均歪間の関係が非線形となるため基礎方程式の解法が困難であることが挙げられる。本報告は梁に関する弾塑性材料力学の実用化を目的として行なつた若干の計算結果を述べたものである。そのため鋼材の繰り返し引張り圧縮試験結果を表現する応力〜歪関係をまず簡単な屈折線と仮定して応力〜歪の変化を表現した場合およびまたこれを適当に組合わせることによつて軟鋼の繰り返し引張り圧縮試験で得た実験値に近い応力〜歪サイクルを表現することを試みた。次にこれらの応力〜歪特性を用いて矩形断面梁が無歪,無応力状態から漸増する比例負荷により曲げモーメントおよび軸力を受ける場合の無次元化曲げモーメント,軸力対同曲率,平均歪の関係およびそれら相互間の偏微係数を数式的並びに数値的に求め,これらのDataを用いて弾塑性域における軸力を受ける梁の応力,歪および撓み分布などを求める方法を述べた。又除荷を受ける場合については上記諸量の増分を求めるための計算式について述べ,又有限間隔の繰り返し変動荷重を受ける場合については純数値的に電子計算機によりこれを行なう方法を例により示した。然し一般に不静定量を含む場合の撓みの計算は全部の計算を電子計算機により行なえば長時間を要し必ずしも実用的ではない。従つて本研究にてはComplementary Energyの定理又は変分原理の応用による近似計算によつてこれを補うこととした。なお剪断力および温度変化の影響については前者はスパンに比して深い梁に対しては重要であり後者についてはその拡張は比較的容易ではあるが本報告では,これらについては述べず,今後に譲ることとした。
社団法人日本船舶海洋工学会の論文
1966-02-28

著者

栖原二郎
九州大学工学部

弾塑性体の材料力学について(その一)

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク