システム低減化技法を用いた壁体の熱応答特性関数の近似

概要

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建物の設備計画・設計のうち,室内の空気調和,特に冷暖房にかかわる作業の大半は建物の熱負荷計算にあって,その主たる目的は,構成材料の熱特性や,外気温・日射量などの外界条件を知って,室内温熱環境の事前予測を行い,快適な温熱空間の提供に寄与することにある.現在ではそうした予測技術の成果の一つに動的熱負荷計算法があり,設備の計画・設計に欠かせないシミュレーション手法になっている.本論文では,この熱負荷計算の中核をなす壁体の伝熱現象を記述する数値合成積演算をより簡単に行うべく,壁体の熱応答特性関数を低減化する近似関数の導出手法が述べられている.周知のように,各壁層を一つの伝熱系とみなし,壁層表面の温度と熱流を系の入出力にとれば,壁体の伝熱現象は,s領域における各壁層の四端子行列の縦列接続で表される.このとき壁体の熱応答特性関数は,得られた四端子接続行列の要素である双曲線関数の複雑な組合せとなるため,これを時間領域で表すには,有理多項式の比で近似しなければならないという問題が派生する.いま有理多項式の次数を十分大きくとれば,熱負荷計算の精度向上には役立つが,逆に数値合成積演算の計算量が増大し,これがシミュレーション手法の利用を制限するという恨みがある.実用的には少ない次数で十分な近似を実現する近似手法が望ましく,従来から多くの方法が提案されてきた.本論文ではこの近似の実現のために,システム理論において系の簡素・低減化に広く用いられている時間モーメント法.Pade近似法,連分数展開法の応用を試み,熱応答特性関数の近似問題は,結局のところ,壁体伝熱系がもつ時間モーメントとMarkovパラメータの取捨選択に帰着することを示す.また,伝熱系における時間モーメントとMarkovパラメータの第1項は,熱応答特性関数の時間領域における初期値,ならびに指数関数項の積分値に一致し,この値を保存して得られる近似関数は,本来の応答を十分実現し得ることを理論的側面から考察し,併せて幾つかの多層壁体を例題にとり,数値計算を通してこの近似関数が良好な近似を有していることを実証する.なお,本論文の一部は文献4)としてすでに報告したものであることを付記する.
社団法人空気調和・衛生工学会の論文
1988-10-25

システム低減化技法を用いた壁体の熱応答特性関数の近似

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