空調用冷凍機設備の評価と省エネルギに関するシミュレーション
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概要
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われわれは冷凍機の省エネルギのための運転および機器設計の最適化を目標として,遠心冷凍機に関する運転性能のシミュレーションを行った.1.シミュレーションの方法遠心冷凍機としてはR-11使用の密閉式圧縮機(モータは冷媒液冷却)のものを用い,最初にダブルバンドルコンデンサを用いるものとして基本式を作成した.すなわち,凝縮器・蒸発器に関する熱平衡と熱交換の式(1)〜(8)を求め,つぎに圧縮器に関してヘッドH(冷媒循環量あたりの有効仕事量)・圧縮効率・モータ冷却などの式(9)〜(15)を求め,最後に冷凍機全体の熱平衡式(16),(17)を求めた.これらの式より変数を消去して式(22),(23)を得た.一方,冷却塔に関しては太田などの報告から式(24)〜(27)が得られる.これらの式を用い,図-3のようなフローシートによりシミュレーションを行う.すなわち,冷水・温水の入口温度・外気の乾球・湿球温度をインプットして,冷却水入口温度を仮定して収束計算を行う.2.運転状態のシミュレーションダブルバンドル形冷凍機の実例を現場で実測し,この実測値とシミュレーションの結果を比較した.すなわち,冷凍機の特性を実測値から図-5のごとく得て,これより冷凍機のヘッド,圧縮効率と冷媒流量,ベーン開度の関係式を得て,これを前述の方法でシミュレーションした.この計算値と実測値の比較を図-7と表-2に示す.図示した通りかなり結果はよく合い,このシミュレーションの方法は,大体実用に適するものと考えられる.この比較においてベーン開度に大きい誤差を生じている原因は,実測によれば図-8のような階段状で,ヒステリシスのある変化を一次曲線で近似したためと考えられる.3.エネルギ消費量に関するシミュレーションこの節では,図-9に示すような代表的性能曲線を用いてシミュレーションを行った.最初に400トン形の遠心冷凍機について,冷水温度を変えたときの能力とCOPの関係を図-10のごとく求めた.すなわち,図示した通り,能力をしぼるほど冷凍機全体のCOPは改善される.これは能力が小なるほど熱交換の温度差が低下し,これにより仕事量Hも減少し,かつ凝縮温度の低下により冷媒エンタルピ差が増し,また蒸発温度の上昇により冷媒比容積が減少し,圧縮機の圧縮効率の低下分を上記の要素が上回って,冷凍機全体のCOPは向上する.図-11にはベーン開度を一定とし,冷水温度と外気湿球温を変えたときの所要動力の変化を,それぞれ点線・実線で示す.この冷凍機は,ベーン開度40%でホットガスバイパスに入るものとし,このバイパス量を比例制御したときの能力と所要動力の変化を図-12に示す.すなわち,能力の減少にかかわらず動力はほとんど変化しない.つぎに図-10で述べた理由で,伝熱面積を増やせば当然,所要動力は減る訳であるが,蒸発器・凝縮器の伝熱面積(それぞれF_w,F_l)を別に2倍,4倍,100倍に変えたときと,同時に変えたときの所要動力の変化を図-13に示す.図示したごとくF_wの増大により能力の増大が著しく,F_lの増大によれば動力の減少は著しい.いずれも2倍,4倍までは効果的であるが,100倍にしてもあまり効果はない.つぎに表-3に示す400,300および200トンの3台の冷凍機の並列運転時を検討した.まず3台のベーン開度を別々に制御して,並列運転時の全体のCOPが最適になる運転状態を求めてみたが,表-4のごとく最適化しても,COPの向上は数%であまり効果的でないことがわかった.このことより,つぎに3台のベーンを同時に同じ開度に制御し,ベーン開度40%以下ではホットガスバイパスに入るようにし,つぎに2台,1台と同じように制御したときの出力と動力との関係を図-14に示す.すなわち,ホットガスパイパスをしない限り,この曲線はゼロ点を起点とする一次直線に近似できる.最後に図-15のようにモリエ線図上に,凝縮・冷却水・湿球・冷水および蒸発の各温度レベルを記入し,一般の場合は,冷却水マイナス湿球の温度差が全体の温度差(凝縮マイナス蒸発温度)の半分以下となり,蒸発器・凝縮器・冷却塔の熱交換性能の改善が冷凍機の省エネルギ設計の根本になることを示した.
- 社団法人空気調和・衛生工学会の論文
- 1976-06-25
著者
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