B-2 企業買収戦略としての買収統合アプローチの選択 : 非統合型及び連携型企業買収の可能性(自由論題)
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概要
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M&Aに関する成功要因研究においては,企業合併後の統合問題が主要な議論の対象であったが,近年,企業買収後の統合アプローチに関して議論がなされている。企業合併が法的独立性の喪失を伴う企業連携であるのに対して,企業買収は被買収企業の法的独立性を維持する企業連携である。しかし,企業買収は企業合併と異なり買収成立後に企業統合を伴う場合と伴わない場合がある。そのためM&Aアドバイザーからは,企業買収後に企業統合するかどうかの意思決定が企業買収の正否を決定する要因の1つであるという主張がなされている。また近年の研究においても,買収後に企業統合を実行しない事例が報告されている。そこで本報告では,企業買収後の統合アプローチ(買収統合アプローチ)の選択を企業買収戦略の中核的要素として捉え,買収企業が買収成立後に経営統合を行わずに被買収企業の経営の自律性を維持する非統合型・連携型買収アプローチの有効性について考察した。まず企業統合を経営統合,組織統合(事業統合,部門統合),製品ブランド統合に類型化し,企業買収の戦略類型として経営統合を伴う統合型買収と経営統合を伴わない非統合型買収及び連携型買収を提示した。次に,非統合型買収と連携型買収の成功事例を取上げた。最後に,経営統合を伴わない企業買収戦略が,被買収企業におけるリーダーシップの発揚や企業文化の維持を可能とし戦略的ケイパビリティの移転につながる組織間学習の環境を構築できる点において有効であることを指摘した。
- 2010-06-25