幼児の単語学習課題における意図と誤信念の理解の乖離
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概要
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先行研究で,言語コミュニケーション領域では,「心の理論」の獲得以前に,幼児は話者の誤信念をより良く理解し,単語を学習すること,さらに,話者の誤信念表象は行為の予測領域の誤信念表象に先行して理解され,2つの領域の思考メカニズムは違っている可能性があることが提起された。本研究では,1.言語コミュニケーション領域では,幼児は,相手の注意をあるものに向けようとする話者の「伝達意図」を理解し,誤信念の理解を前提とせずに話者の意図を推論できること,2.話者の意図は行為の予測よりもより良く,早く理解され,行為の予測領域とは意図の推論メカニズムが違っていること,さらに,3.話者の誤信念の理解と行為の予測の誤信念の理解は思考メカニズムが違うとはいえないという3つの仮説を検討した。3歳から5歳の子どもたちに,主人公が新奇なおもちゃに命名する単語学習課題と標準誤信念課題を用いて調査した結果は,人と物の関係性の強い単語学習課題では,彼らは話者の誤信念の理解を前提とせずに話者の意図を推論し,単語を学習できた。言語コミュニケーション領域では意図は誤信念を前提とせず,行為の予測領域よりもより良く,早く理解され,2つの領域の意図の推論メカニズムは違うといえた。絵カード物語に手続きを変更した課題では,話者の誤信念と行為予測の誤信念の理解には差がなく,2つの領域の誤信念の理解は思考メカニズムが違うとはいえなかった。
- 2010-09-20