子どもの保護という側面からみた慣習の再考 : 「養児保護」に着目して
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概要
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日本では伝統的に養子縁組や里子家庭委託など,「他人の子ども」の養育が盛んに行われていたが,このような慣習を家庭的養護の一種,または家庭的養護が発展しうる地盤としてとらえる観点はあまりみられない.それは,慣習が子どもの安全を脅かす危険性をはらんでいたことへの注意によるところが大きいが,本稿では,児童保護行政の誕生期の大正後半に構想されていた「養児保護」に注目することによって,慣習が子どもの家庭的養護として残り得た可能性を見いだすことを目的とした.「養児保護」の対象となるのは施設や親戚などの介入がなく,危険にさらされる可能性が最も高い子どもたちであり,養児がおかれている不適切な環境や養育者の利益に左右される状況を改善することが主目的とされていた.一方で,「養児保護」は他人の家での子どもの委託という慣習を残しつつ,子どもの保護を図る可能性を含んでいたが,それは実現に至らず,「養児保護」が制度化することはなかった.
- 2010-02-28