X線写真によるヒラタキクイムシの生態観察法(ヒラタキクイムシ科)
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概要
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1)木材内部に生息するヒラタキタイムシの生態を観察するにあたって,材を切断して内部を調べると,それ以後の成育が阻害されるので,材を切断することなく,X線写真を定期連続的に撮影する方法によって自然の生態のまま成育を追跡してみた。2)その結果,幼虫の発育,成長,変態の過程が時期的にX線写真によって明瞭に観察できた。すなわち,次のとおりである。i 6月頃には,ほとんどすべての個体が羽化脱出したが,成育の遅れた幼虫と蛹が若干残っていた。また,新しく卵より孵化した小さい幼虫がみられた。ii 8月頃には,残存していたすべての個体が羽化脱出してしまい,新しく孵化した小さい幼虫もやや成長して明瞭に曲玉型に認められた。iii 9月頃には,温度の高いこの1か月で幼虫の成長がとくに早かったが,なお成長は10月頃まで続くようであった。iv 11月頃には,多くの個体が著しく変形し,老熟幼虫になった。V 2月頃には,早く蛹化したものが認められた。vi 4月頃には,多くの個体が羽化脱出し,5月項には孔道に虫体がほとんど認められなかった。しかし,これは冬季暖房設備のある実験室において飼育したもので,蛹化・羽化・脱出が常温の場合より多少促進されたようであった。要するにヒラタキクイムシは,当地においては確かに1年1世代であるとの結論に達した。3)同じ飼育箱で,同様の条件で飼育しても,各合板の化学的(栄養的)組成に差異があるので,幼虫の成育にもかなりの差が認められ,また生息密度にも非常な差が認められた。一般害虫の場合とは逆に,ヒラタキクイムシでは,生息密度の高いほうが発育も良好であった。これは成虫がデンプン含量の高いところを選んで多く産卵する事実を証明するものである。4)ヒラタキタイムシの孔道は比較的短距離であり,行動範囲は意外に狭かった。5)ヒラタキタイムシの孔道の方向は,縦・横・斜めのいずれにもつくることができるが,やはり木目にそった方向に多くつくられた。
- 日本家屋害虫学会の論文
- 1979-12-31
著者
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