イギリスにおけるホール・スクール・アプローチの検討 : 「分離」との関係に焦点を当てて
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概要
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本研究は,イギリスにおいて,分離教育から特別なニーズ教育を模索する中で生まれた理論および実践の一つであるホール・スクール・アプローチに関する論稿である。本稿は,同アプローチが行き詰まった要因を,とくに「分離」との関係に着目して検討し,ホール・スクール・アプローチと「分離」の関係をあらためて問い直すことを目的とする。その論証過程として,90年代にクラークらによって展開された「ホール・スクール・アプローチを超える試み」が,「分離」の否定を理念に掲げながらも,その実践において,内的・外的要因によって「分離」を再生する結果に直面したことに着目する。なぜならこの事実は,「分離」そのものをいかにとらえるかという視点から,ホール・スクール・アプローチと「分離」の関係を問い直す必要性を我々に示唆するものだからである。そこで,治療的教育の再検討を通して,「分離」が積極的な教育的意義をもつ可能性を検討する。以上の考察から,「分離」を一面的にとらえてホール・スクール・アプローチと対置させて理解するのではなく,むしろ専門性の充実や個々のニーズに応じたきめこまかい指導を可能にする一面をもつことを積極的に評価する必要があることを明らかにした。その上で,この「分離」のもつ意義をホール・スクール・アプローチの実践の中に再構築することとして,両者の関係を理解することが肝要との結論を得た。
- 日本教育方法学会の論文
- 2005-03-31