日本産Lobesia属(鱗翅目,ハマキガ科)の幼生期
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概要
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Lobesia属の幼虫は針葉樹から広葉樹まで広く食害し,ヨーロッパではL. botrana ([Denis & Schiffermuller])のようにブドウの重要害虫となっている種もある.日本でもL. virulenta Bae & Komaiはナシの, L. aeolopa Meyrickは,チャ,キーウィ,ブドウなどの害虫となっている.また, L. arguta Bae & Komaiはモミ属,トウヒ属,ツガ属などを加害する.本稿ではこれまで幼虫および蛹について詳しい記載がなかった3種,すなわちL. virulenta, L. aeolopaおよびL. coccophaga Falkovitshの終齢幼虫と蛹について詳細な記載を行った.L. virulenta 幼虫:胴部の色は暗褐色または黒色,前胸背楯は赤褐色,肛上板には斑点が見られる.尾脚の鉤爪は28-30本で,尾叉は先端が6-7本に分かれている.針葉樹から広葉樹まで広く食する.蛹:典型的なハマキガ科のタイプで腹部第3節背面の前方のD1刺毛の間に存在するとげ(dorsal spine)は4本,末端節の側面には突起がない. L. aeolopaホソバチビヒメハマキ 幼虫:前種と非常に類似するが胴部の色は褐灰色または明るい褐色であり,尾脚の鉤爪は20-22本で前種よりやや少ないことで区別できる.多くの広葉樹を食する.蛹:典型的なハマキガ科のタイプで,前種と非常に似るが腹部第3節背面の前方(D1間)のとげは5-6本. L. coccophagaスイカズラホソバヒメハマキ 幼虫:胴部の色は黄緑色または明るい青緑色.前胸背楯は黄緑色,肛上板には前種のような斑点は見られない.尾脚の鉤爪は25-30本で,尾叉は先端が5-6本に分かれている.食草はスイカズラの花や葉にかぎられる.蛹:前種と類似するが,腹部背面のとげの形と尾端の形状は特徴的である.幼虫の肛上板の斑点および蛹の腹部背面のとげの数と形は種を識別する点で,あるいは種内の系統関係を推定する点で重要な形質であると考えられる.
- 日本鱗翅学会の論文
- 1992-03-30
著者
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〓 良燮
Department Of Biology College Of Natural Sciences University Of Incheon
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〓 良燮
Entomological Laboratory, College of Agriculture, University of Osaka Prefecture
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保田 淑郎
Entomological Laboratory, College of Agriculture, University of Osaka Prefecture
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保田 淑郎
Takarazuka University Of Art And Design
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