ニセタマナヤガPeridroma sauciaの採集記録と覚え書 : 神戸市六甲山上における周年調査を中心に

概要

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大和田(1977)は,汎世界的分布を示しながら東アジアから正確な記録を欠いていたニセタマナヤガPeridroma sauciaを,ネパール,台湾から記録し,あわせて,これが1976年から1977年にかけて大阪府下でも4頭採集されたことを報告して,今後の分布動態への注意を喚起した.その後本種は,1976〜1978年の採集品にもとずいて,滋賀県比叡山と和歌山県那智勝浦町(喜多,1978),徳島県剣山(増井,1978),岡山県倉敷市(宇野,1978)でそれぞれ1頭ずつ記録され,さらに,1978年夏には,四国の5産地から24頭が記録された(増井,1979). 筆者は,1977年7月以来,六甲山上の茶店で燈火に飛来する蛾類の採集を続けているが,現在までに,同行の緒方正美博士と共に51頭の本種を採集しているので,これまでの採集経過と,個体変異に関する知見を報告する.さらに,多くの方々のご好意で筆者の手もとに集まった日本および東アジアの採集記録を,これらの知見に基づいて整理,報告し,あわせて,この興味深い種をめぐる諸問題を総括的にとり上げ,今後の本種の動態観察の資料としたい.
日本鱗翅学会の論文
1980-01-20