地獄堕ちの能力 : 『事件の核心』考察(下)
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概要
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スコービーは「あわれみ」と「責任感」がきわめて強く、過去の「誓い」が現在のスコービーに重くのしかかっている。受け身の生き方もこのためである。さらに過去に苦しむ様子は、ほとんどスコービーの過去について語られないという語りが示している。スコービーの「あわれみ」は相手を見下ろし、相手の人生をどうにかできるというエゴイズムを持っていた。しかしスコービーは自らのエゴイズムに気がつくことがなかったので、誤解と判断ミスにつながった。スコービーの「責任感」「あわれみ」、それにエゴイズムと誤解や判断ミスというパターンは、少女の死の場面を経てヘレンと神との関係に引き継がれ、その深刻さを深めている。同時にエゴイズムも大きくなり、誤解や判断ミスは深刻さを増す。そしてスコービーの「あわれみ」と「責任感」における愛とエゴイズムは、ルイーズとヘレンと神のための自殺において、それぞれの頂点に達している。
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