甜菜を利用したバイオエタノール生産における意義と課題に関する一考察
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概要
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1999年の食料・農業・農村基本法の制定後,従来までの生産性重視の農業から環境重視の農業への移行が進んできた。さらに,近年は地域的な環境対応としての農業に加え,温暖化対策といった,より広域的な環境問題への対応が求められるようになった。そうした中で,農政においても,日本では甜菜のような過剰が生じてきている農産物を温暖化対策の一環としてのバイオ燃料の原料として用いようと検討している。こうした動向を踏まえて本研究では,バイオ燃料の原料作物として甜菜を利用する場合の意義について検討する。他方,甜菜の価格及び収穫量の変化とともに,日本における砂糖の消費減少の歴史的背景を明らかにすることで,砂糖の消費減退と甜菜の生産増加による余剰の発生という現状が示された。その結果,甜菜のバイオエタノール化は生産過剰基調が生じている甜菜の,新たな消費拡大に繋がる可能性があることが分かった。こうした,農業における環境政策の導入により生じるコスト的な課題に対してどのような支援策が必要であるかを分析した。また,2002年12月の「バイオマス・ニッポン総合戦略」において国産バイオエタノール生産を国策として行うことが示されており,現在その技術は実証過程を通じて研究開発が進みつつある。2009年9月には「バイオマス活用推進基本法」が施行され,バイオマスの開発はさらに拡大するであろう。加えて,現在稼働している工場の規模を基に,甜菜からバイオエタノール生産を行う生産コストを試算した。結論的には,国産原料を用いたバイオエタノール生産には価格的な採算面での限界があることが分かった。これを補うために必要な支援策には,自動車燃料に対するエタノール混合率3%(E3)の導入,直接混合方式の利用,国内で不足するバイオエタノール輸入に対する関税を利用した価格補填などの対策が必要であることを示唆した。
- 2010-09-17
著者
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