成人前期から中年期における慢性疾患患者の病気の捉え方の特徴 : モーニング・ワークの検討を通して
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概要
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本研究では,成人期以降に慢性疾患に罹患した人々におけるモーニング・ワークの検討を通して,病気の捉え方の特徴を明らかにすることを目的とした。成人前期から中年期にかけての慢性疾患は,その発達期の特徴から,(A)慢性疾患が深刻な葛藤を伴うものとして経験される,(B)慢性疾患がtypicalな「身体の衰え」として,スムースに受け止められるという,2つの異なる類型が出現すると予測された。成人前期から中年期に慢性の腎臓疾患に罹患した11名(男性6名,女性5名)を対象に半構造化面接を実施し,発病後に焦点づけたライフ・ストーリーを聴取した。分析の結果,対象者は(1)病気への葛藤が深刻な群,(2)病気への葛藤が緩やかな群,(3)モーニング・ワークが出現しなかった群の3つに分類され,想定された2つの類型が適切であることが示されるとともに,穏やかな「否認」が出現する類型を加える必要性が示された。また類型の相違には,発病時の症状や,発病前の困難な問題の有無,親や身近な他者の病気・死の経験が関係していた。この中で,身近な他者や親の老い・病気・死といった出来事が,自身の病気を位置づけていく心理過程に重要な意味を持つと考えられたことから,今後はこの問題に焦点をあて,より詳細に検討を行っていく必要性が示された。
- 2010-06-20
著者
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