「統一死体提供法」の改定(2006年) : opt-inの破綻?
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概要
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アメリカでは、2006年に「統一死体提供法」the Uniform Anatomical Gift Actが改定された。この改定法は2007年末までに20州で採択されている。一番大きな改定目的は臓器提供を促進することである。小論では、以下の点を示したい。この法は従来どおりの自律尊重原理、opt-in方式を倫理原則としているとはいうものの、実質的には推定同意のopt-out方式を採っているように見える。なぜなら、人びとは移植のために自分の臓器を提供するはずであるという推定に基づき、臓器提供を促進するための拡大解釈がなされているからである。心停止後からの臓器提供を増やすために、OPOsスタッフや医師は、生命維持装置を取り付けられた生きた状態の患者がドナー基準に適合するかどうかを調べる。ここには、心拍停止後のいつが患者の死と判断されるのかという医学的な問題と、アドバンス・ディレクティブと臓器提供意思との相反という倫理的問題が生じている。自由意思を尊重しながら、臓器提供を増やすことは可能なのだろうか。利他的動機から臓器提供したいという個人の意思を尊重することと、人びとは臓器提供を望むはずであると推定して政策を推し進めることとの間には矛盾がある。死にゆく患者とその家族、そして医療者がこの矛盾を抱え込むことになるだろう。
- 日本生命倫理学会の論文
- 2008-09-21
著者
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