地域医療情報ネットワークにおける情報技術の構築と受容過程
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概要
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本稿では,情報技術が特定の地域に受容されていく過程を,地域医療情報ネットワークの先進的事例をもとに明らかにした.本稿で検討した地域医療情報ネットワークの事例において,情報技術が導入される以前,中核病院とその他の医療関係機関は,患者の獲得をめぐって競争関係にあった.一方,情報技術が導入される段階において,情報技術の導入を主導した地域中核病院は,地域医療情報ネットワークの維持運用費といった技術的,経済的問題だけではなく,自らが果たそうとする機能や他の機関との関係をふまえて,当該ネットワークの空間スケールを設定した.その際,当該ネットワークへの参加率を高めるためには,地域医師会や地域薬剤師会といった利害団体による協力が必要なことから,こうした団体の管轄範囲が考慮された.情報技術は競争から協調にいたる医療機関間の関係を支えるとともに,複数のアクターによる利害関係を地域医療情報ネットワークの空間スケールに反映させるように機能した.このようにして生まれた空間スケールは,医療機関間の関係および情報技術との相互作用から生じることが明らかになった.情報技術は地理的距離とは無関係に受容されるわけではなく,情報技術と社会関係との相互作用を通じて県や二次医療圏の一部といった特定の地域における一部の医療関係機関に受容されていくのである.
- 経済地理学会の論文
- 2009-06-30
著者
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