情報ネットワーク化に伴う保険薬局の水平的協業化(<特集>流通空間の再構築)
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概要
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本稿では,地方の保険薬局が共同で同一の情報ネットワークを導入し,在庫削減を目指した取組みを水平的協業化と定義し,こうした協業と参加薬局の自律的な活動との両立を可能にしている論理を明らかにした.医療用医薬品の流通において近年,保険薬局は医薬分業の進展によって分散化した患者のニーズに迅速に対応する必要が生じている.この課題に対して,水平的協業化は以下のような効果をもたらした.第1に,情報ネットワーク化の効果は,受発注業務をオンライン化してリードタイムを短縮することを可能にした.第2に,組織や個人の間を結び付けるネットワーキング機能は,地理的に分散した在庫に関する情報を,参加薬局が居ながらにしてアクセスすることを可能にした.その結果,薬局1店当たりの在庫コストを削減することができた.また,同じ情報ネットワーク,配送システムを利用することによって,薬局1店当たりの情報システムのコスト,配送コストが低減し,薬局の経営合理化に寄与した.しかし,水平的協業化を実現するには,情報ネットワークの信頼性の確保が条件となる.そこで,薬剤師会やシステム開発会社,主導的な立場にある保険薬局といった仲介者が,情報システムのセキュリティや参加主体間の人的信頼を確保することで,協業化における最後の条件をクリアしていることが明らかになった.
- 経済地理学会の論文
- 2005-03-30
著者
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