河川氾濫原におけるイネ科帰化草本の定着とその影響
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概要
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広島県太田川中流の氾濫原では,イネ科帰化草本シナダレスズメガヤEragrostis curvula(ウィーピングラブグラス)が急速に優占しつつある.1991年の秋に砂州に1m×1mのコドラートを35ヶ設置し,6年間追跡調査した結果,本種が出現するコドラート数,本種の被度が50%を越えるコドラート数のいずれもが急激に増加した.1993年の長期にわたる増水は一時的な被度の低下をもたらしたが,その後の回復はすみやかで,1996年には半数以上のコドラートで本種の生育が認められた.他の帰化草本や在来種では,このような増加傾向は認められなかった.シナダレスズメガヤは多年生で大きな株になるため,増水時に水流を妨げ,結果として株の下流側にマウンド状に砂が堆積する.本種の優占度と堆積した砂の厚さの間には正の相関が認められ,分布の中心部では砂の厚さが30cm以上に達していた.また,コドラートにおける本種の優占度と出現種数の間には負の相関が認められた.本種は種間競争のみならず,立地環境そのものを改変することによって,河川氾濫原の遷移パターンを変えてしまう可能性が示唆される.
- 日本生態学会の論文
- 1998-01-20
著者
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