クロヒカゲの局所的分布を決定する要因の季節変化
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概要
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蝶のハビタット内での分布は成虫と幼虫の餌や微気象,配偶行動を行う場所などの影響を受けて決まると考えられてきた.これらの分布を決定する要因に対する蝶の好みが変化する場合,蝶の分布も変化することが予想される.そこでクロヒカゲ(鱗翅目;ジャノメチョウ亜科)を材料に,ハビタット内での成虫の分布を決めている季節ごとの要因を調べた.クロヒカゲは京都では年3化したが,世代にかかわらず成虫の餌である樹液資源の分布が最も強く影響しており,樹液が多く出ている場所を中心にしたパッチ個体群が形成されていた.パッチの空間配置は世代ごとに少しずつ変化し,5-6月と9-10月の世代は林縁部を中心に分布したが,7-8月の世代は林内に分布を広げていた.7-8月の世代は日当りの悪い場所に分布する傾向があったことから,世代ごとの分布の変化は7-8月の世代が体温上昇を抑えるために暗い場所を利用し,他の世代は体温を上げるために明るい場所を利用する結果と考えられた.また,5-6月の世代だけがなわばり行動を行うため,この世代の雄はなわばり行動を行う場所に分布が規定されていた.なわばり行動は前方が開けた木の梢で行われるため,5-6月の世代はなわばり行動を行うのに好適な場所が多い林縁部に分布する傾向を強めていると考えられた.
- 2000-12-20