事業部制マネジメント・コントロールにおける"日本型"の研究 : マネジメント・コントロールの理論仮説を整理するためのノート
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概要
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本稿は,本学会の1996年度第一回研究フォーラムでの基調講演に加筆・補正を加えたものであり,事業部制マネジメントをめぐる基本的諸問題について,事例研究を踏まえた課題を整理し,いわゆる「日本型」事業部制マネジメント・コントロールの特徴を浮上がらせようとしたものである.事業部制と呼ばれる分権管理システムが,「新しい」タイプのマネジメント・コントロール・システム(MCS)として日本の多くの企業に導入され始めたのは,1960年に公表された通産省産業合理化審議会の答申『事業部制による利益管理』以降である.この「答申」に触発されて,当時の多くの日本企業は,経理部主導型の計数管理の問題として事業部制マネジメントを検討・導入した事例が多かったが,その一方で,組織の効率的管理の方法論と認識する考え方も強かった.この「答申」および当時の事業部制論議の大勢は,欧米とくに米国の企業実践を背景にして,主として米国の研究者たちによって構築された学説を下敷にして展開されるものであった.ところが,事例研究ないしフィールド・スタディが示唆するところによると,日本の個別企業の多くは,当初はこの「米国型」のMCSを新しくてすぐれたものとして導入したものの,それを現実に運営する過程では,それぞれの企業環境および組織風土に応じて種々の変形ないし変質を加えていく例が多かった.しかも,その「日本型」と呼ばれるような変形・変質の仕方には,多くの企業に共通的に見られる特徴が少なくないのである.本稿は,そのような問題意識のもとで書きためてきた筆者の研究ノートから,特徴的なものを選んで設問ふうに整理し直したものである.分析の便宜上,事業部制MCSの組織構造に関わる側面と,計算構造に関わる側面とに分けて,考察をすすめる.
- 日本管理会計学会の論文
- 1997-03-16
著者
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