1970年代西ドイツにおける「カリキュラム」研究と伝統的な「レールプラン」研究との比較
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概要
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本稿の目的は,西ドイツにおいて特に1970年代に活発になった「カリキュラム」(Curriculum)研究と,伝統的な「レールプラン」(Lehrplan)研究とを比較し,両者のカリキュラム構成論としての違いを考察することにある。「レールプラン」研究のもとにある教授学と「カリキュラム」研究とは,カリキュラムの歴史において研究の二つの基本モデルとされ,今日においても両者の間には交流が図られている。本稿では,1960年代後半および1970年代を,両者の交流の西ドイツにおける端緒と見なして,両者を比較した。そのさい,両者の観点の違いだけでなく,この二つの観点にもとづいたカリキュラム構成論の違いに着目した。そこで,ヴェーニガーのレールプラン理論や,教材精選理論である「範例方式」,そして「範疇陶冶の理論」と,LOTプロジェクトグループのフレクシッヒのカリキュラム理論とを比較した。本稿からは次のようなことが明らかになった。それは,伝統的な「レールプラン」研究が,教授内容をいかにして子どもの世界を開く教育学的=要素的なものにするかを問い,どのような教授内容がどのように要素的・範例的であるかを考察するのに対して,LOTプロジェクトのような「カリキュラム」研究においては,カリキュラムの内容そのものよりもカリキュラムを構成する際の経験科学的な手続きが問われるということである。
- 日本教育方法学会の論文
- 2008-03-31