マイワシ卵の比重変化と鉛直移動(シンポジウム:鉛直混合と物質輸送)
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概要
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多くの海産硬骨魚類が産出する分離浮性卵の典型であるマイワシ卵について,比重と浮上速度,および現場での鉛直分布を実測し,産卵後の浮上と分散,孵化前の沈降について考察した.調査は,1991年3月上旬に薩南から四国沖の黒潮流軸付近で,風速10〜20数m/sの強風下で行われた.卵の比重は産出された表層混合層の海水よりも2〜4×10^<-3>小さく,浮上速度は1〜2mm/sであった.この比重差は発生初期から中期の間は比較的安定しているが,卵は孵化前の数時間に比重が増大し,孵化時には浮上速度を失った.発生初期から中期の卵は表層で多く,深さとともに指数関数的に減少していた.鉛直1次元拡散モデルを適用し,これらのデータから表層混合層の鉛直渦拡散係数(K_z)を推算したところ,数百〜千cm^2/s程度と見積もられた.卵は夜半前の短時間内に海面下20〜30mで産出された後,浮上しながら混合層内で散らばるが,このように強い混合のもとでは,その鉛直分布は数時間以内にほぼ定常状態に達すると推測された.卵は表層混合層よりも下にはほとんど分布していなかったが,このことは躍層以深のK_zがかなり小さいと考えれば説明できる.また,孵化前の比重の急な増大は,鉛直分布の重心を下方に移すと考えられた.
- 日本海洋学会の論文
- 1993-08-31
著者
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