青年期女性における母親からの分離に関する一考察 : 食と性,身体の問題を通して
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概要
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親から分離することは,親を喪失することと同義であり,喪失体験は分離不安や見捨てられ不安を青年にもたらす。本論では,過食や下剤の使用,性的問題行動を繰り返した青年期女性が,母親から精神的に分離していくプロセスを,食,性,身体イメージの変化という観点から考察した。親から分離した一人の「私である」ためには,親との間に自他の境界を形成し,自己の身体を自分のものにすることが不可欠である。母親と一体となった未分化な身体的自己をもったクライエントの内的世界には,自己の内部に摂取された母親対象が物理的に存在しているようであった。その体内化された母親対象を自己の身体から排泄し切り離していくことによって,クライエントは母親対象を心理的に喪失し,「私である」ことが可能となった。食や性が絡んだ症状や問題行動の基底には,取り入れや排泄に関する内的空想が存在しており,その内的空想への理解を通してクライエントの身体と情緒をつないでいくことが,個体化した自己の生成に寄与すると考えられた。
- 2010-01-31
著者
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