聖地の零度 : フランス・テゼ共同体の事例を中心に
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概要
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テゼは超教派の修道会として1940年代にロジェ・シュッツによって始められたが、現在では、宗教に無関心とされる世代を多く集める巡礼地として知られている。本稿ではテゼの「若者の聖地」としての側面に注目し、そのダイナミズムについて考察する。テゼの巡礼地としての聖性は、聖人の出現譚や奇跡の泉といった既成の宗教資源に依存しない。むしろ、テゼには宗教的・歴史的慣性を捨象する傾向が見出せ、テゼは「聖地の零度」を構成している。いかなる教派的レトリックにも服さないことで、テゼはあらゆる巡礼者が出入り可能な聖地空間を構成しているのである。本稿では、従来の聖地巡礼が超越的な出来事や人物を重視する垂直方向への交感を強調するのに対して、テゼを各巡礼者の参加と相互作用という水平方向への交感を重視するものとして位置づける。テゼは、多様な巡礼者たちの相互作用の中で、その都度立ち現れる不安定な聖地なのである。
- 2009-06-06
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