亜熱帯海洋島における木本種のニッチ幅とニッチ重複
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概要
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1.間接傾度分析により,小笠原諸島母島における木本種の分布特性,および外来木本種と在来木本種の分布域の重複を調べた.2.82箇所に10×10mのコドラートを設置し,出現種とその立地環境を調査した.出現種を1次変数,立地環境を2次変数とした正準対応分析(CCA)により各コドラートの序列化を行った.CCAによって選択された1軸と2軸によって定義された二次元空間を母島の森林のニッチ空間とし,空間内における主要木本種の出現頻度の分布を明示した.そして,各種の出現頻度分布を基に,ニッチの広さと最大出現頻度,外来種と在来種のニッチ重複度を計算した.3.母島の植生は標高と接峰面高度が表す大スケールの地形の起伏と,ラプラシアンと微地形が表す小スケールの地形の起伏に強く影響を受けていた.これらの環境要因は全て水分条件と関係する環境要因であり,年降水量が1200mm程度と少ない母島において,水分条件が植生の配置に影響を与える重要な要因となっていると考えられる.4.母島において,いくつかの高木・亜高木種はほとんどのニッチ空間において高い頻度で分布していた.逆に分布域が狭いのにかかわらず高出現頻度の種は少数であったが,尾根の矮生低木林に分布する低木であった.5.母島の主要木本種の中で外来種はアカギ,シマグワ,キバンジロウ,ギンネムの4種であった.外来木本種の分布域は,アカギ,キバンジロウは中腹から山頂にかけての島内での湿性な環境に,シマグワ,ギンネムは中腹から海岸域にかけての乾性な環境であった.母島の木本種の中でアカギ,シマグワは分布域が広く,高頻度で出現する種であった.6.アカギは主要木本種31種中15種,シマグワは7種に対する分布域の重複が顕著であり,在来種への影響が大きいと考えられる.現状では固有種の多い山頂部の低木林において高頻度で出現する外来木本種はいないが,湿性環境を好むアカギとキバンジロウが侵入している事が示された.
- 植生学会の論文
- 2005-06-25
著者
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小池 文人
横浜国立大学大学院環境情報研究院
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小池 文人
横浜国立大学環境科学研究センター
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小池 文人
島根大学生物資源科学部
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小池 文人
Faculty Of Life & Environmental Science Shimane University
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三上 光一
横浜国立大学大学院環境情報学府:(現)長野市立博物館茶臼山自然史館
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小池 文人
横浜国立大学
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