上下顎第一大臼歯の近遠心的対合関係が咬合力の発現に及ぼす影響に関する研究
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概要
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上顎第一大臼歯の近心頬側咬頭頂が下顎第一大臼歯の頬側面溝に一致する咬合状態は,上下顎臼歯列の理想的な対合関係と認識されているが,その機能的意義は不明である。そこで本研究では,天然歯列を有する健常者を対象に,上下顎第一大臼歯の近遠心的対合関係を検索するとともに,咬頭嵌合位での最大噛みしめ時の咬合力を測定し,上下顎第一大白歯の近遠心的対合関係が咬合力の発現に及ぼす影響を検討した。被験者は健常有歯顎者46名とし,各被験者の片側白歯列をアングルの分類を参考に3群に分類した。また,感圧フィルムを用いた咬合力測定と下顎歯列模型の形状測定によって,下顎の各咬合接触面における咬合力を三次元的に計測するとともに,下顎の歯に作用した咬合力の合力を求め,その大きさ,作用方向,作用部位を分析項目として算出した。その結果,上顎第一大臼歯の近心頬側咬頭頂が下顎第一大臼歯の頬側面溝に対合する場合,下顎第一大臼歯において咬合力が発現していた咬合接触面の数が多く,咬合力の合力も大きいことが判明し,咀嚼機能の遂行に有利であることが示唆された。一方,下顎の各臼歯における合力の作用方向と作用部位は,上下顎第一大臼歯の近遠心的対合関係によらず,有意な差を認めなかった。これは,天然歯の咬合接触が咬合力の方向や作用部位を歯周組織の負担能力に適うように成立している可能性を示唆すると推察された。
- 2006-06-30