ヒト歯根膜細胞との相互作用によるHL-60の破骨細胞形成とその分化誘導過程における骨吸収調節因子の役割
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概要
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本研究は,ヒト歯周組織における破骨細胞の分化誘導機構の解明を目的とし,まずヒト歯根膜細胞との共存培養による,ヒト前骨髄球様細胞株HL-60の破骨細胞分化能を検討し,さらにHL-60の破骨細胞への分化過程における骨吸収調節因子の作用を調べた。破骨細胞前駆細胞として,末梢血単核球(PBMCs),HL-60およびヒト単球様細胞株THP-1を用いた。1,25(OH)_2D_3(以下VD_3)存在下で歯根膜細胞との共存培養を行い,形成された破骨細胞の同定を行った。HL-60を用いて単独培養を行い,骨吸収調節因子VD_3,M-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)およびsRANKL(soluble receptor activator of NF-κB ligand)の作用について解析した。1)歯根膜細胞との共存培養により,PBMCsおよびHL-60から,吸収窩形成能を有し,ポドゾーム/α_vβ_3インテグリン/c-Src/カルシトニンレセプター陽性の破骨細胞が形成された。2)HL-60の単独培養において,VD_3存在下でのみTRAP陽性細胞が形成され,さらにM-CSFを添加することにより,大型のTRAP陽性多核細胞が形成された。VD_3+M-CSF存在下で,RANKLはTRAP陽性多核細胞の大型化を促進した。3)吸収窩形成は,VD_3+M-CSF+sRANKL添加時に最も多く認められた。4)HL-60にVD_3+M-CSFを作用させることにより,c-fmsおよびRANKのmRNA発現が増加した。HL-60はヒト破骨細胞前駆細胞としての性質を備え,歯根膜細胞との相互作用により成熟した破骨細胞に分化した。このとき,VD_3は分化の初期段階での付着および分化に必須の因子であった。VD_3存在下において,M-CSFは破骨細胞前駆細胞のc-fmsおよびRANK発現を増加させ,TRAP陽性細胞の増殖と多核化および吸収活性を促進し,sRANKLは多核化と吸収活性を促進することにより破骨細胞の形成に関与する可能性が示唆された。
- 東北大学の論文
- 2005-12-27