成長ホルモンが顎顔面の成長に与える影響 : 成長ホルモン投与期間による比較
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概要
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成長ホルモン分泌不全性低身長症(growth hormone deficiency; GHD)は,成長ホルモン(GH)の分泌不全により同性,同年齢の者と比較し,身長もしくは身長増加量が著しく低いものと定義されている疾患であり,GHの補充療法が第一選択として行われる。しかし,GHDに対するGH投与による顎顔面部への影響についての報告は少数例によるものがほとんどでいまだ不明な点も多い。そこで,GHD患者をGH未投与群,短期投与群,長期投与群の3群に分け,GH投与期間による顎顔面部の成長に対する影響について検討を行った。GHDと診断された57名(男子33名,女子24名)について側面頭部X線規格写真の透写図を作成し,顎顔面各部の計測を行った。各計測値について,標準値に対するSDスコアを求め,統計学的手法を用いて比較検討を行った。未投与群は標準値に比べ,前頭蓋底長,全顔面高,上顎骨前後径,下顎骨全体長,下顎骨体長,下顎枝高はいずれも-0.15〜0.86SDであった。長期投与群は未投与群に比べ,上顔面高,上顎骨前後径,下顎枝高が有意に大きかった。短期投与群では未投与群との間に有意差は認められなかった。また,前頭蓋底長,全顔面高,下顔面高,下顎全体長,下顎骨体長については,各群間に有意差は認められなかった。GHDに対するGH長期投与によって,身長のみならず顎顔面部,特に上顎骨,下顎枝の成長を加速させることが明らかとなった。このことは,GHによる顎骨成長コントロールの可能性を示唆するものと考えられる。
- 東北大学の論文
- 2005-12-27