ラットの実験的歯の移動に及ぼす共振振動刺激の効果
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概要
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【目的】矯正学的歯の移動において,歯の移動速度を促進する目的で,従来の静荷重負荷による歯の移動に加えて定期的に振動刺激を負荷することを試みた。振動刺激には,最も効果的に歯周組織に力学的刺激を負荷し,賦活化することが可能であると考えられる共振周波数を用いた。本研究は,実験的歯の移動時に歯およびその部位の歯周組織に定期的に共振振動刺激を負荷することにより,歯の移動および歯周組織の反応がどのような影響を受けるかについて検索した。【方法】共振点追従機能を有する振動力負荷システムを用いて,6週齢Wistar系雄性ラット(n=6)の第一臼歯とその部位の歯周組織振動系の共振周波数を測定した。同ラット(平均体重約150g)の上顎左右第一臼歯間に,初期荷重約120mNを発生する規格化した持続的拡大装置を21日間装着し,歯の移動量を測定した。共振振動刺激負荷群には,0,7,14日目に,60Hz,1.0m/s^2の正弦振動を第一臼歯の咬合面に対して垂直方向から8分間負荷した。一方,対照群には,振動刺激を負荷せずに歯の移動のみを行った。一部の動物は歯の移動開始0,3,8,15および21日後に,麻酔下にて屠殺し,4% Paraformaldehyde溶液を用いて潅流固定した。上顎骨を摘出して,さらに,一晩浸漬固定した後,10%EDTA溶液を用いて脱灰を行った。通法に従ってパラフィン包埋を行った後,厚さ5μmの連続切片を作製し,H-E染色,Tartrate-resistant acid phosphatase (TRAP)染色および免疫組織化学染色を施して,歯根吸収量,破骨細胞数およびReceptor activator of NF kappa B ligand (RANKL)の発現量について検索した。【結果】(1)ラット第一臼歯の共振周波数は61.02±8.38Hzであった。(2)共振振動刺激負荷群(n=6)は対照群(n=6)に比べて有意に歯の移動量が大きかった(p<0.05)。組織学的に病理所見は認められず,歯根吸収量においても,共振振動刺激負荷群と対照群との間に有意な差は認められなかった。(3)共振振動刺激負荷群における歯根膜圧迫側のRANKL発現は,歯の移動開始3日目において対照群よりも強く,破骨細胞数は,8日目において対照群と比べ有意に多かった。【結論】共振周波数を用いた定期的振動刺激は,実験的歯の移動時において,歯根吸収などの為害作用を増加させることなく歯の移動を促進した。そのメカニズムとしては,共振振動刺激負荷により歯周組織圧迫側におけるRANKL発現が増加し,破骨細胞が増加・活性化することで破骨細胞による骨吸収が促進されたと考えられた。
- 東北大学の論文
- 2005-12-27