道路空間の「公共性」に関する市民意識の日独比較
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概要
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本論文では,道路空間の「公共性」に関する市民意識を形成する構造をアンケート調査から日独比較分析することで,道路空間利用に関する社会的合意形成のための有効な方策に資することを目的とした。アンケート調査結果によれば,日本(堺市)でもドイツ(ヴュルツブルク市)でも,現在の都心部における自動車による交通混雑,交通事故,生活・歩行環境の悪化,商店街等の活力低下などの面から,都心部への自動車乗り入れ規制を容認する意識が強い。次に,日本では自宅直近の道路に対する「私的」感が強いが,ドイツでは,他の人々による道路の多様な使われ方に寛容であり「私的」感は薄い。逆に,自宅前道路の通行規制や道路整備に伴う建物移転など,公共による私権制限に対する反発はドイツの方が強く,日本の方が公共的な事業に対する協力意識は高い。以上のことを路面公共交通整備のための道路空間の再配分という観点から整理すると、以下のことがいえる。まず、ドイツでは意識面から私的制限に対する抵抗の大きさの反映として、社会的合意を得るための法体系、ガイドライン・基準の整備状況、情報公開制度、予算的裏付け等が適切に整備されていると考えることができる。わが国では、これらがあいまいなまま、ある場合には行政の恣意的施策と地域有力者だけの根回しで進められた事業も多いと考えられ、行政と市民の不幸な相互不信感を生み出す一要因となっている。近年のわが国市民の権利意識の増大と行政活動の公平性・透明性・客観性の確保という点から、ドイツに倣った同様の「仕組み」を整えればLRT整備が急速に進む可能性はある。その際、わが国の直近道路空間に対する「私的感」にも十分に配慮した計画内容とすることが合意を進める上で重要である。
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