SELENE衛星搭載用電子エネルギー分析器の開発
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概要
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現在月はグローバルなダイポール磁場を持たないことが知られている.しかし過去の観測から月表面には磁気異常が存在することが解っている.もし月溶岩地形に関係した数kmから10km程度の磁気異常が多々見つかれば,それはおそらく熱残留磁化起源であり,月表面の地形依存した磁気異常モーメントの方向と年代が,推測される古月グローバル磁場と矛盾が無ければ,溶岩形成当時の月グローバル磁場の存在を強く示唆する.我々は電子反射法によって磁気異常を観測するため,SELENE衛星搭載用電子エネルギー分析器(ESA:Electron Spectrum Analyzer)の開発を行なった.電子反射法とはSELENE衛星に搭載される磁力計LMAG(Lunar MAGnetometer)と同時に観測を行い,太陽風の電子が月表面の磁場によって反射されることで生じる電子のピッチ角異方性を利用して月表面磁場を求める方法である.SELENE衛星は3軸姿勢制御衛星であるためスピンしない.そのため月面側に1台,反月面側に1台の計2台のESAで4πの視野を持たせることにした.ESAは基本的にはTop-Hat型の静電分析器であるが,荷電粒子の入射口に45°方向を中心に±45°の掃引を行なう視野角掃引電極を置くことで2πの視野を持つことができる.分析器の開発に際しては,1998年にNASAにより打ち上げられた月周回衛星であるLunar Prospectorのデータを用いて,月周回軌道上で取得が予想される電子のカウント数を推定し,2台の衛星搭載用ESAの感度を決定した.さらに数値計算によるESAの特性と較正実験結果を比較することで,新規開発要素である視野角掃引電極の性能とセンサーの加工精度,組み上げ精度に問題が無い事を確認した.月溶岩地形に依存した数kmから10km程度の磁気異常を測定するためには,測定エネルギー,角度分解能,時間分解能などの運用モードを適切に選択する必要がある.そこでtest particleシミュレーションを行うことで適切な運用モードを特定し,10km程度の磁気異常を世界最高レベルの時間分解能1秒で観測できることを示した.
- 宇宙航空研究開発機構の論文
著者
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齋藤 義文
ISAS,JAXA
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齋藤 義文
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
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齋藤 義文
Isas Jaxa
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秋場 良太
株式会社 浜銀総合研究所
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斎藤 義文
Isas Jaxa
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齋藤 義文
宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部
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