5.熱機関概念の拡張とネゲントロピー : 宮沢賢治の物理学(大会テーマ「新たな理科教育の創造」)
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概要
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宮沢賢治が自然科学を深く理解し、それを文学の糧としていたことはこれまでも議論されてきたが、いくつか重要な見おとしもある。その一つとして「水仙月の四日」における物理学を取り上げる。この童話は子どもが夢見る砂糖菓子と吹雪(と宇宙の星座)の話であるが、この二つが「相変化をアウトプットとする熱機関」として、おなじカテゴリーに属するものであることをあきらかにする。この熱機関は「ネゲントロピーを生成する機関」とも言えるのであるが、シュレーディンガーにはじまるネゲントロピーは、これまで、間違って理解されつづけてきた。光合成を例として、ネゲントロピーの正しい理解を提示する。「水仙月の四日」の根底にはこのように重要な物理学的洞察、熱機関概念の一般化、がある。この童話が発表されたのが80年前であることをおもうと、専業物理学者ではない宮沢賢治のいかなる能力や資質がこれを可能にしたのかを考え、これまで賢治のこの寄与が物理学関係者に十分には認識されなかったのは何故かを論じることは賢治の愛読者に課された大きな課題であろう。これに関するいくらかの考察ものべる。生徒たちの物理離れが云われているが、賢治文学における物理学を考えることもこの問題への手がかりになるのではなかろうか。それは、日頃物理にひたっているわれわれ自身を省みることにつながっていくかもしれない。
- 2004-08-06
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