更生保護施設の機能に関する一考察
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概要
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はじめに 日本の更生保護制度は、官民協働に特徴づけられる。従来「保護会」と呼ばれてきた更生保護施設は、一八八八(明治二一)年に治山、治水事業家でもあった金原明善らが設立した「静岡県出獄人保護会社」を嚆矢とし、以後一〇〇年以上にわたって民間の篤志家、宗教関係者、退職公務員が中心となり、刑務所を出所した者や仮釈放者となった者に食事や宿泊所を提供してきた。また、政府もこれを奨励した。保護会は、戦前、戦後を通じて刑罰を受けた者の社会復帰に重要な役割を果たしてきたが、経営上の困難、施設の老朽化さらには地域住民からの排斥運動等に遭い、その運営に困難を来す場合も少なくなかった。そこで、一九九五年、更生保護事業法の制定により、更生保護法人制度が創設され、「更生保護施設」として、従来の公益法人としての扱いに比べて税制上の優遇措置を受けられるようになり、他の社会福祉法人と並んで、より公益性の高い法人と位置づけられることとなった。この間、更生保護事業が一貫して主として民間の手によって運営されていたことは特筆に値する。現在、更生保護施設を利用する者の大半が保護観察対象者であり、また、刑務所から仮釈放となった者についても約三人に一人が社会復帰の足がかりとして更生保護施設を利用しており、保護観察や仮釈放の実施上、更生保護施設は必要不可欠の存在となっている。就中、近時、矯正施設の過剰収容が問題となっていることから窺知されるように、施設から出所後、更生保護施設における保護を要する者もまた増加傾向にある。本稿は、更生保護事業における更生保護施設の重要性に鑑み、その運営のあり方につき少しく考察を加えるものである。
- 2007-01-31
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