担癌ウサギの血清および臓器中遊離アミノ酸の変動について
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概要
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Brown-Pearce癌移植ウサギの血清および臓器中遊離アミノ酸を測定し以下の結果をえた。1) 癌移植後次第に体重減少する群(A群)と10〜14日間は体重減少の著明でない群(B群)に分けられる。体重が10〜15%減少した時期において,対照と比較して有意の変動のみられた血清中遊離アミノ酸は, A群ではAsp, Glu, Thr, Val, Met, Ile, Leu, Phe, Tyr, Ala (増加), B群ではAsp, Glu, Thr (増加), Arg (減少)であり,またA群でB群に対して有意に増加していたものはThr, Val, Met, Ile, Leu, Phe, Tyrであった。腫瘍死時の剖検所見では,肺,肝,腎への血行性転移は両群でほぼ同様に認められたが,後腹膜リンパ節および大網への転移はB群に比しA群に著しかった。このように同程度に体重減少を示した時期で比較して,腫瘍の進展の著しいと思われるA群ではB群より多種のアミノ酸について増加が認められ,さらにA群とB群との間では,特に必須アミノ酸類に有意の差がみられた。これらのことから移植された腫瘍の増殖の様相は担癌ウサギの血清中遊離アミノ酸,特に必須アミノ酸の変動になんらかの形で投影されているものと考えられる。2) 臓器特に肝,肺および腫瘍では体重減少のみられない癌移植12日後において,腫瘍組織では対照に比し,必須アミノ酸を含む遊離アミノ酸の著明な増量がみられ,肝および肺では逆に必須アミノ酸類に減少がみられた。これらのことから,担癌生体内での遊離アミノ酸,特に必須アミノ酸類の他臓器から腫瘍組織への流れというものが推測され,さらに腫瘍組織にはなんらかのメカニズムで遊離アミノ酸がtrapされるのではないかと考えられる。3) 体重が10〜15%減少した癌移植後18〜21日ころにおいて,各臓器により有意に変動するアミノ酸は異なっていた。このことから担癌生体内で癌の増殖進展によって引き起こされる臓器中の遊離アミノ酸の変動は各臓器により異なることが明らかである。4) 肝,腎,肺,脳,睾丸などと比較して腫瘍組織にはGlnはきわめて少量である点が特長的であった。
- 千葉大学の論文
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