イヌ胸大動脈神経の実験組織学的研究
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概要
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成熟したイヌ71例を用い,胸大動脈神経について肉眼解剖学的観察,福山の扇形細裂標本法による有髄線維の量的および形態学的分析,神経切断変性実験による有髄線維の起源と経路の追求を行ない次の成績を得た。1.肉眼解剖学的には胸大動脈神経はT_1-T_<13>の胸部交感神経節などから分かれて起こり,後肋間動脈に平行して胸大動脈に分布する細枝で,1個体平均12本存在する。2.組織学的には胸大動脈神経は有髄線維と無髄線維から構成され,後者が過半数を占めているが,前者も1個体平均365本存在する。それらの有髄線維を福山法に従って分類すると,小径65.5%,中径23.0%,大径8.5%,最大径3.0%で,小径,中径の細い線維が圧倒的に多いが,知覚性と思われる大径,最大径の太い線維も11.5%の割合に含まれていた。3.後根系有髄線維はおもにT_1-T_6(主力T_4)の脊髄神経節に由来して知覚性と考えられ,細い線維が圧倒的に多く太い線維は8.5%を占めるに過ぎなかった。4.脊髄神経節の中枢側の後根に存在すると考えられる遊離性脊髄神経節細胞に由来する細い後根系有髄線維も若干認められた。5.前根系有髄線維はおもにT_2-T_7(主力T_3)の前根に由来して交感神経節前線維と考えられ,すべて細い線維であった。6.後根系有髄線維は前根系有髄線維の約3倍の量があるが,両線維ともに交通枝を経て交感神経節にはいると直ちに胸大動脈神経に進入する直達路のほかに,交感神経幹内を上行あるいは下行した後,上位あるいは下位の本神経にはいる迂回路を通るものも多数あり,かくして神経線維は胸大動脈の広い範囲に分散している。7.迷走神経系有髄線維は存在しなかった。
- 千葉大学の論文