国際機能別分業下における海外子会社の能力構築 : 日系HDDメーカーの事例研究
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概要
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近年一部の日本企業は、本国拠点が開発機能、海外子会社が量産機能に特化するという国際機能別分業を構築している。国際機能別分業では海外子会社のみが量産機能を担うため、海外子会社の重要性はより大きくなっていく。そのため、海外子会社の能力構築は、国際機能別分業下の多国籍企業にとってより重要な課題となる。日本企業の海外子会社の能力構築において、本国拠点からの支援が果たしてきた役割は大きかったことが知られている。しかし、これまでの日本企業に関する研究は国際機能別分業下にある多国籍企業を対象としてこなかった。国際機能別分業をとっている多国籍企業とそうでない企業では、本国拠点と海外拠点の関係に大きな違いがある。このような違いが、環境変化に直面した海外子会社に対する本国拠点からの能力構築支援に何らかの問題を引き起こす可能性がある。そこで本稿では、「国際機能別分業下において、環境変化に直面した海外子会社の能力構築を本国拠点が支援する際に起こりうる問題」を明らかにすることを研究目的とした。そのために、ハードディスクドライブメーカーであるα社を対象とした事例研究を行った。α社の事例研究から、国際機能別分業には、環境変化に直面した海外子会社に対する本国からの能力構築支援を阻害する2つの要因が内在していることが明らかになった。そのような要因とは、分業によって引き起こされる「情報選別のバイアス」と「各拠点の相対する環境の差異」であった。そして、国際機能別分業は本国からの能力構築支援を妨げることで、環境変化に直面した海外子会社の能力構築を阻害しうることが明らかになった。このような発見から、海外子会社の能力構築という動態的な観点からは、国際機能別分業は必ずしも望ましい組織体制とはいえないことを主張した。そのため、国際機能別分業を選択する企業は、国際機能別分業に内在する問題を克服するための方策を考える必要がある。
- 2009-04-30
著者
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