現代日本の消費文化に関する一考察
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概要
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現代日本の消費文化は"クール・ジャパン"と評され,海外からも称讃されるようになった.この小論は,評価の高まりつつある現代日本の消費文化を,どのように位置づけることが可能なのか,文明史的な視点から考察を試みるものである.サミュエル・ハンチントンは「文明の衝突」の中で,現存する世界の主要文明は,七ないし八であるとし,「日本文明」はその一つであると言明した.多くの研究者が日本文明を固有の文明であると認識し,西暦100年〜400年頃の時期に中国文明から派生し成立したと見ているからである.日本文明は主要文明の中で唯一,一国家一文明という特徴を持ち,文化の継続性という点できわめてユニークな存在である.この特異性を考えると,日本文明の創世期と最初の大きな文化的達成の時期に,その本質は自ずと現れていると見るべきであろう.その意味で,最初に国家としての自己確認を行い,日本社会の指針を示した聖徳太子の「和」のコンセプトや,「源氏物語」や藤原道長のライフスタイルを頂点とする平安貴族の快楽主義的な自己実現の生き方は示唆的である.平安京というインフラと荘園を背景とする経済力によって,平安貴族コミュニティは「文化消費の共同体」として稀有な達成を示した.この時代,「和」の精神,「桜」の美というシンボルによって,日本文明の本質が示されたのである.一方,鎌倉時代以降,二次大戦終結までは,「武」の精神,「刀」の時代となった.明治維新も「富国強兵」に表現されたように,その本質は旧武士の「武」のモラルに基づく「士族国家」への転位であった.大戦後の日本では「武-刀」の全面否定への大転換が起こり,「和-桜」の復活となった.「和」の精神を基盤とした,平安貴族モデルへの回帰こそが戦後世代のライフスタイルと価値観となった."クール・ジャパン"という現代日本の消費文化への賛美は日本文明の伝統を踏まえた優美と洗練へのリスペクトなのである.
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