1890年代前半におけるイギリスの不況
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概要
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1890年のベアリング恐慌においてもイギリスはパニックを回避することができ,緩やかに景気が転換していった.しかし,オーストラリアでは投機化していた経済開発が破綻し,経済は長期の停滞過程に陥った.インドでは銀価下落に伴うルピー為替低下により本位貨幣問題が深刻になり,インド綿工業の発展もあり,イギリスは対応に追われることになった.さらに,アメリカでも本位貨幣問題が深刻化し,関税問題等ともあわせ,イギリス経済に大きな影響を与えることになった.こうして,それまで周辺地域を中心に投下されるようになっていたイギリス資本は国内に大量に還流することになり,ロンドン金融市場では金融緩慢状態が継続することになった.これらを背景に,73年以降進んでいた産業面,金融面のイギリス経済の構造変化,世界経済関係の再編が進み,90年代の不況は19世紀末「大不況」の最終局面をなすことになる.