雇用・労働政策と社会保障(<特集>医療福祉行政と医療福祉経済)
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概要
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国民が豊かに,かつ健康や生活に不安なく暮らせることは国の運営の基本的目標である.現代社会において,就業している国民の大部分は雇用者であり,豊かな暮らしを達成するうえで雇用労働による所得は中心的役割を持っている.生活の安定を図る上で社会保障の役割は大きいが,社会保障も国民や企業の所得からの拠出を財源としている.そういう意味からも,雇用及び労働政策と社会保障は別々のものではなく,国民の福祉を達成する上で相互に関係を有している.我が国の社会保障制度は正社員中心の雇用システムを前提に構築されているが,雇用システムそのものが大きな変化に見舞われており,社会保障制度との乖離が目立っている.生存権の保障という基本理念を踏まえつつ,社会保障制度を雇用システムの変化にどう対応させていくかが今後の課題といえる.また,近年,社会保障の運営においても,社会保障政策,特に福祉政策と雇用政策との関係を見直し,緊密な連携を図っていくべきという考え方が提起されている.自立の促進にあわせて,人口減少社会における労働力率の向上を図る意味からも今後に期待したいが,その場合,施策の目的や目標を明確にしておくことが必要である.