通電による微生物機能の制御(<特集>物質生産を指向した基盤研究と連携研究展開上の課題(II))

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呼吸や発酵といった,生物が生命維持に必要なエネルギーを獲得する過程では,少なからず物質間の電子の受け渡し,すなわち酸化還元反応が生じている.微生物特有の物質生産能は,個々の微生物の特異な呼吸,発酵様式に起因するものが少なくないことから,酸化還元反応を効果的に制御することで,微生物による物質生産の糸口が見えてくる可能性がある.一方,地下環境に生息する微生物においては,深度が増すごとに酸化環境から還元環境へと変化する中で菌叢の変化が確認されており,微生物種と酸化還元状態の相関が示唆されている.また,自然環境中で絶妙なエネルギー物質の収支バランスを維持しながら生息していると考えられる環境微生物においては,人工的な培養系での増殖がなかなか難しいのが現状である.適切なエネルギー授受が成立する酸化還元状態を人有為的に創出することによって,これまで難培養性であった環境微生物が培養可能になるのではないか.このような観点から,我々は微生物の培養の際に,電極反応によって培地の酸化還元状態をコントロールし,微生物の増殖,代謝を制御する「電気培養」について検討している.今回は,電気培養の原理およびその効果について説明するとともに,これを利用した新規微生物の探索,および代謝制御の事例を紹介する.さらに,微生物を利用した電気エネルギーによる物質生産の可能性を探りたいと思う.
2009-05-25

通電による微生物機能の制御(<特集>物質生産を指向した基盤研究と連携研究展開上の課題(II))

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