階層的分業構造の海外移転と組織間システム : 一汽VW、天津トヨタ、北京現代の事例研究
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概要
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本研究では、外資系自動車メーカーの組織間開発システム、組織間生産システム、組織間取引システムの形態が、本国の階層的分業下にある1次部品メーカーや2次部品メーカーの国際分業の立地選択にどのような影響を及ぼすのかについて調べた。その結果、以下の点が明らかとなった。第1に、一汽VWがドイツ本社と同様に、組織間開発システムを統合型に、組織間生産システムをモジュラー型に、組織間取引システムをオープン型にした結果、VWの1次部品メーカーや2次部品メーカーの中国進出があまり進まなかった。第2に、天津トヨタが日本本社と同じく、組織間開発システムと組織間生産システムを統合型に、組織間取引システムをクローズド型にした結果、トヨタの1次部品メーカーの多くは中国に生産拠点を設立したが、2次部品メーカーはあまり生産拠点を設立しなかった。第3に、北京現代が韓国本社と同様に、組織間開発システムを統合型に、組織間生産システムをモジュラー型に、組織間取引システムをクローズド型にした結果、1次部品メーカーと2次部品メーカーの中国進出が進展した。本研究の分析結果が示唆する含意は、外資系自動車メーカーの組織間システムのデザインによって、本国の1次部品メーカーと2次部品メーカーの国際分業の立地選択が影響されるという点である。つまり、自動車メーカーの国際分業の立地選択に影響を及ぼす重要な要因は、製品アーキテクチャ、立地特殊的な優位、企業特殊的な優位、内部化のインセンティブなどである。他方、階層的分業の下位階層にある1次部品メーカーや2次部品メーカーなどの国際分業の立地選択は、これらの要因以外にも、自動車メーカーの組織間システムのデザインによって影響される。そのため、自動車メーカーは組織間システムをデザインする際に、自社の組織間システムの形態が本国の部品供給の連鎖上にある1次部品メーカーや2次部品メーカーなどの海外進出に及ぼす影響について考慮する必要がある。
- 2008-09-30
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