タイ国自動車産業におけるものづくり能力の構築 : 承認図生産に向けたタイ系部品メーカーの対応
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概要
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タイ国の自動車産業は、主に日系自動車メーカーの進出とともに発展してきたが、その後日系部品メーカーの追加的進出や現地の部品メーカーの発展も伴って、近年では各メーカーに東南アジア地域における拠点として位置づけられるようになってきている。タイ国政府も自動車産業について、最も発展を優先させるべき主要産業として位置づけており、「Detroit of Asia」を目指すという方針を打ち出している。この拠点化によって、タイ国では、自動車メーカーによる製品開発工程の移転が進展しつつあるが、これまでの経験蓄積や技術力が伴わないタイ系部品メーカーは、この変化に十分対応できている状況ではない。しかしながら、タイ系部品メーカーの製品開発への参画は進出している日系自動車メーカーにとっても重要な課題であり、タイ系企業の製品開発能力を検討することには一定の意義がある。本研究は、タイ系部品メーカーを対象として、承認図生産段階までを想定した場合の製品開発能力の構築方法を検討したものである。方法としては1.「ものづくり能力」の構築という観点から製品開発の特徴を捉え、マネジメント能力強化の重要性を説明する2.これまで検討してきた製品開発能力の段階的構築過程をベースに、その構成要素をマネジメント側面にまで拡大することで、研究・図面作製・テスティング能力などの技術的側面だけではなくマネジメント能力が並行して構築される際のシークエンスを提示する3.タイ系企業の現状を踏まえた上で、承認図生産に向けて克服するべき3つの課題を解決するための具体的な取り組みを検討するという3点が採用された。結果として、製品開発能力の構成要素が商品企画から販売までの広範に分布していることから、ものづくり能力構築という視点の重要性が説明された。また、先行研究で提示された製品開発能力の段階的発展モデルの拡張から、各段階にあわせたマネジメント能力の構築モデルが説明された。また、具体的な取り組みでは、調達、テスティング、図面管理における3つの課題への対応が考察された。この3つの課題への対応策については、検証するケースがないために現時点では仮説に留まっているが、今後取り組みを進めている企業を観察しながらその妥当性を検討していきたい。
- 2008-09-30
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