グリーン・ネオリベラリズムとエイジェンシーの共同体 : フィリピンの海域資源管理の事例から
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概要
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グリーン・ネオリベラリズム的資源管理レジームを支える統治性は、自然の管理者として人間を訓練し、規範化し、エコ・ラショナルな主体を作り出す。本稿の基本的関心は、一方で資源管理という特定の権力関係を内包した知識と言説の装置が、そこでの非対称的力関係に埋め込まれた個を拘束し統治してゆくプロセスを明らかにしつつ、他方でそのような拘束と統治を生きる個が、様々な社会関係とネットワークを利用しつつ共同体の資源利用をめぐる秩序を改変してゆく社会的実践を記述することである。前者は「資源管理の制度化のプロセス」、後者はそのような制度が共同体に可変的に浸透してゆく「文脈化のプロセス」と言い換えることが出来る。本稿の論点の1つは、このような資源管理の制度化と文脈化のプロセスは表裏一体であり、資源利用者たちの地域村落においては相互規定的に浸透するということである。グローバルな環境主義を背景とした資源管理というマクロな統治プロセスと、資源利用者達によって構成されるローカリティの日常世界の接合の局面に注目する本稿が論じるのは、状況依存的に可能な資源利用形態を選び取り、自らの生活設計を便宜的かつ暫定的にではあれ構築してゆく人々の実践である。そのような実践に従事するエイジェンシーと共同体、あるいはそこでの共同性のあり様、これが本稿の2点目の論点である。このような議論を通して伝統的共同体/近代的市民社会という二元論を超えた地点に見出される共同性のあり方を検討すること、これが本稿の3つ目の論点である。資源管理への人類学的アプローチの可能性とは、このような親密圏と公共圏が相互に浸透する領域に展開する資源利用者達のミクロな実践を照射することにあるといえよう。
- 2009-03-31
著者
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- 永田貴聖著, 『トランスナショナル・フィリピン人の民族誌』, 京都, ナカニシヤ出版, 2011年, 215頁+viii, 3,500円(+税)