中高年齢者の長距離歩行中の生体反応
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概要
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本研究の目的は、多くの中高年齢者が健康・体力の保持増進のために実践しているウォーキングについて、その望ましい歩き方に資する知見を提示することであった。そこで、歩く習慣を有する人たちの間で人気の高い長距離(20km)歩行(テスト1)と登山(テスト2)(標高差620m、距離18km)を取り上げ、その間の生体反応を観察した。テスト1の対象者は58歳から69歳の男女15名、テスト2の対象者は62歳から70歳の5名の男女であった。すべての対象者は身体的に健康であり、定期的にウォーキングを実践していた。テストに先立ち、最大酸素摂取量と脚伸展パワーの測定を行った。テスト1および2では、心拍数を連続的に、そして血中乳酸濃度と血糖値を歩行前、中、後の計7回、測定した。また、テスト2では、歩行前後に採血し血液成分の分析を行った。対象者の体力(最大酸素摂取量、脚伸展パワー)は、同性、同年齢の日本人の標準値に比べると"優れている"と判定された。テスト1の20km歩行は、各自のペースで歩いたため、所要時間は2時間45分から4時間であった。その間の心拍数は、100拍/分から140拍/分であり、最高心拍数の60〜80%に相当していた。血中乳酸濃度は、歩行中4mmol/lを超えることはなかった。また、血糖値は105.7mg/dlから92.1mg/dlへと減少した。他方、遊離脂肪酸は、0.32mg/dlから1.21mg/dlへと増加し、歩行後半は脂質代謝の割合が増加していたことが推察された。テスト2の登山は、全員が同じスピードで歩いたが、途中5回の休憩(約20分間)をとった。上りの心拍数は120〜150拍/分であり、下りは80〜120拍/分であった。なお、休憩時間には心拍数は減少し、80〜100拍/分となっていた。また、上りでの血中乳酸濃度は、5名中3名が4mmol/lを超えていたが、下りでは3mmol/l以下であった。これらの測定結果から、次のような結論が得られた;日常歩く習慣を有している中高年齢者は、同じ年齢層の日本人と比べ、高い水準の体力を保持している、また、20kmを無酸素的な代謝を伴わないで比較的速いスピードで歩き通せる歩行能力を有している、しかし、歩く習慣を有していても同じスピードで登山するときはかなりの個人差がみられる。
著者
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金子 香織
華学園栄養専門学校
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金子 香織
放送大学大学院 文化科学研究科
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宮下 充正
放送大学
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堀川 虎男
放送大学教育開発プログラム
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春山 知子
お茶の水女子大学
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春山 知子
お茶の水女子大学文教育学部芸術・表現行動学科
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金子 香織
放送大学大学院文化科学研究科
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金子 香織
日本聴覚障害者ラグビー連盟:放送大学大学院文化科学研究科
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