45.都市直下地震を考慮した被害想定・地域防災計画のあり方 : 札幌市を例にして
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概要
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1995年兵庫県南部地震により都市直下地震の恐ろしさが改めて認餓された。従来より行政体は当該地域の被害評価を前提とし、それに則って地域防災計画を策定することを基本としてきた。しかしながら被害評価に必要な想定地震は、プレート境界に発生する海溝型地震に主力がおかれていた。従って地域への地震動入力を評価する手法も、海溝型地震を主としたものについて開発が進んできた経緯がある。例えば、海溝型地震は震源距離が比較的大きいため、地震を点震源として扱い得る。Kawasumiに代表される距離減衰式に表層地盤の影響を補正する簡便手法による地震動予測が可能である。しかし、直下地震についてもこのような扱いが可能なのかは検討する余地がある。特に、想定地震の震源パラメータの設定誤差(揺らぎ)が、地域の地震動入力評価結果に与える影響の大きさを事前に知っておくことは、地域の地震被害評価の観点から非常に重要であると思われる。しかしながら、この点を意識し、直下地震による被害評価を行っている事例はあまりみない。本論文は、直下地震を想定した場合、地域の地震動評価・被害評価において考えておかねばならないことについて、主として震源パラメータ設定誤差の観点から考察する。本論で例にする札幌市は現在直下地震を考慮した被害評価・地域防災計画の見直しが進められているが、沖積層が厚く堆積しているため都市直下の活断層の位置が特定できない。そのため震源パラメータを一つに絞り込むことは不可能である。可能性のあるいくつかのパターンでシミュレーションをする必要があり、その結果をもって有効な被害評価・地域防災計画のあり方を提案する必要がある。シミュレーションめ結果以下のことが明らかとなった.札幌市の震度分布は、小林・翠川の方法を用いて求めた基盤面への入射波最大速度に、北海道南西沖地震から求められた増幅率を乗じて、表層地盤種別の補正値を加えて予測を行う。引き続き海溝型と直下地震の震源パラメータの揺らぎが震度分布に与える影響を調べた。その結果、直下地震は海溝型に比べて断層深さ・破壊開始点・断層位置の影響が大きいことがわかった。そして実際に36パターンの震度と被害予測を行うことにより、理学・工学・行政の3者間のルールでこれらの地震の特徴を明らかにし、想定地震を決定する必要がある。直下地震と海溝型地震ではその地震動入力を評価する際に注意すべき点が異なり、それがその後の地震防災計画立案に極めて大きく影響する。直下地震は震源パラメータ設定のわずかな揺らぎが、地域内の地震動・被害無を大きく変化させてしまう。直下地震の被害想定を1パターンのみについて行うのは、実際の地震被害と全く異なった結果を生じかねない。地域の被害地震想定に当たり十分配慮すべき点として指摘する。
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