1 急性前骨髄球性白血病に対するトレチノイン(ベサノイド)および三酸化ヒ素(トリセノックス)による治療(第628回新潟医学会,がんの分子標的治療)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
急性前骨髄急性白血病(acute promyelocytic leukemia;APL)は,アズール穎粒・アウエル小体などの細胞形態,高率に併発する播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation;DIC),t(15;17)(q22;q23)の染色体転座など,いくつかの特徴を有する急性白血病である.過去においてAPLの治療は困難とされていたが,レチノイン酸(all trans retinoic acid;ATRA)の出現によりAPLの治療は一変した.現在ではATRAと化学療法の併用が一般的であり,寛解率,生存率ともに80%を越える報告が散見される.しかしATRAに対する耐性,治療後の再発,ATRA症候群などの問題は残されたままである.また,再発・難治性APLに対して新たな治療薬剤が開発が進み,そのひとつとして三酸化ヒ素が挙げられる.三酸化ヒ素にはQTc延長や不整脈,APL分化症候群といった有害事象が報告されているが,再発・難治性APLに対して単剤で高い寛解率をもつ薬剤である.また,ゲムツズマブオゾガマイシンもATRA治療後再発例に対しての有効性が報告されている薬剤である.近年,新たな治療戦略として,未治療例に対するATRA+三酸化ヒ素+(ゲムツズマブオゾガマイシン)による治療が報告され,全生存率90%という好成績となっている.今後の追試により期待できる治療戦略と考えられる.以上,様々な新規治療薬の開発が注目されているが,APLにおいてはDICによる早期出血死亡の問題が未だ解決されておらず,新規薬剤による治療戦略と共に今後の検討課題であると思われる.
- 新潟大学の論文
著者
-
橋本 誠雄
長岡赤十字病院血液内科
-
小池 正
長岡赤十字病院内科
-
橋本 誠雄
新潟大学 大学院保健学研究科血液・腫瘍検査学
-
佐藤 直子
長岡赤十字病院血液内科
-
藤原 正博
長岡赤十字病院血液内科
-
小池 正
新潟大学 保健
-
橋本 誠雄
長岡赤十字病院 血液内科
-
小池 正
長岡赤十字病院 血液内科
-
佐藤 直子
長岡赤十字病院 血液内科
関連論文
- 白血病性形質細胞様樹状細胞株(PMDC05)の機能と分化 : 単球由来樹状細胞,形質細胞様樹状細胞との比較検討
- CD4^+CD56^+白血病細胞から樹立した形質細胞様樹状細胞類似の性格を有する細胞株(PMDC05)に関する検討
- 5 再発治療抵抗性低悪性度B細胞リンパ腫に対するR-ClaM療法(Pilot Study)(I.一般演題,第49回新潟造血器腫瘍研究会)
- 白血病性形質細胞様樹状細胞株(PMDC05)における形質細胞様樹状細胞から骨髄系樹状細胞への形質転換
- 1 Trilineage leukemiaの4例(第47回新潟造血器腫瘍研究会)
- 1 免疫グロブリンJH鎖の再構成を認めたT-GLDPの1例(第46回新潟造血器腫瘍研究会)
- 5 発症後17年目に抗胸腺リンパ球グロブリン療法が奏効した重症再生不良性貧血の免疫学的特徴と問題点(第45回新潟造血器腫瘍研究会)
- 4 Ph陽性急性骨髄性白血病の一例(第45回新潟造血器腫瘍研究会)
- 3 AT III低下を伴うDICを合併したAPLの1例(第9回DIC研究会)
- 3 VAD療法を行った心アミロイドーシスの2例(I.一般演題,第237回新潟循環器談話会)
- 成人急性リンパ性白血病における第一寛解期同種骨髄移植群と化学療法群の長期生存率の比較
- Fanconi 貧血と思われる再生不良性貧血に続発した急性骨髄性白血病に親子間同種骨髄移植を施行した1症例
- 妊娠7週で二次性プロテインS欠乏症から脳静脈洞血栓症を発症し, ヘパリン皮下注射で分娩に成功した1例
- 4 慢性骨髄性白血病,多発性骨髄腫に合併したEBV関連Bリンパ増殖症の1例(I.一般演題,第49回新潟造血器腫瘍研究会)
- 1 急性前骨髄球性白血病に対するトレチノイン(ベサノイド)および三酸化ヒ素(トリセノックス)による治療(第628回新潟医学会,がんの分子標的治療)
- 2 異型リンパ球増加を伴い自然寛解したAsian Variant Intravascular Lymphoma(第47回新潟造血器腫瘍研究会)
- 5 腎移植後に発症したAMLの1例(第46回新潟造血器腫瘍研究会)
- 4 DICによる慢性硬膜下血腫を合併したMDSの1治療例(第9回DIC研究会)
- 15 当院における非ホジキン悪性リンパ腫の治療成績(I. 一般演題)(第 61 回新潟癌治療研究会)
- 白血球除去フィルターを使用した血小板輸血における非溶血性副作用の発現頻度の検討
- 第119回日本肺癌学会関東支部会 : 18.病初期BHLおよびACE高値のみを呈したサルコイドージス・リンパ腫症候群の1例
- 血液学的寛解時にもPh染色体が100%認められたPh陽性急性リンパ性白血病の1例
- 2) 阪神大震災における救急医療活動-ii (〈シンポジウム〉大規模災害における救急医療
- 造血器悪性腫瘍に対する同種造血幹細胞移植後の chimerism 解析
- 1 DICにて発見された進行胃癌合併妊娠分娩症例の1例(第9回DIC研究会)
- 2 細胞質内に巨大封入体を認めたAMLの1症例(第38回新潟血液同好会)
- Maticの変法によるチアゾール・オレンジ法を用いた網血小板測定の臨床応用
- G-CSF, M-CSF
- 骨髄線維症を合併し, くすぶり型巨核芽球性白血病(M7)へ転化した本態性血小板血症
- 重症妊娠中毒症を来した再性不良性貧血合併妊娠の 1 症例
- 慢性特発性骨髄線維症に皮膚筋炎を合併した1例
- 7 メシル酸イマチニブで完全寛解を得たフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の1例(第45回下越内科集談会)
- CD56 陽性T細胞の特徴
- シンポジウム 血液疾患の治療をめぐる進歩
- del(7)(q32)に付加染色体異常 inv(16)(p13q22)を伴った急性骨髄単球性白血病