中国宋代美術の受容と鎌倉・建長寺 : 絹本著色釈迦三尊像と「建長寺様」の仏像
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概要
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本稿は、中世文化研究上の重要なテーマの一つである、鎌倉時代の日本における中国宋代文化の受容について、法衣垂下像という形式の仏教彫刻から論じるものである。台座から長く衣を垂らすこの形式は、これまで主に十四・十五世紀の鎌倉を中心に流行したとされ、鎌倉時代の問題としてはほとんど議論されなかった。そこで本稿では、建長五年(一二五三)に本格的宋朝禅を導入して建立された鎌倉・建長寺に伝わる二作例-室町時代に制作され、法衣垂下形式を示す仏殿本尊地蔵菩薩坐像と、南宋絵画の優作である絹本著色釈迦三尊像-を取り上げて、鎌倉で法衣垂下像が成立する時期やその原本、造像背景などを検討した。その結果、まず十三世紀前半に先駆け的な法衣垂下像が存在したこと、仏殿本尊像の形式(これを本稿では「建長寺様」と呼ぶ)の成立が同寺創建当初に遡ることも想定できること、釈迦三尊像が「建長寺様」の原本である可能性があることを論じた。そして、北条時頼創建の建長寺という場所で濃厚な宋代美術摂取が行われたことに幕府の意図を見出せることを述べた。
- 2009-03-01