空の自覚における転換の原理 : 『般若心経』と『中論』をてがかりに
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概要
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『般若心経』における「色即是空、空即是色」という表現は、言葉(世界)の止滅とその再生を示している。このような止滅から再生への移行は、空の自覚によって引き起こされる転換として経験される。世界は、空の自覚における自己限定から生ずるのであるが、世界を生み出す空のはたらきは、縁起のはたらきにほかならず、空の自己限定としての事物は、「有るもの」でありながら、「有るもの」でも「無いもの」でもない。ナーガールジュナ(Nagarjuna/龍樹,2〜3AC)はこのことを「縁起を我々は空と呼ぶ」と述べており、このような二項対立的見解を超えた立場を生きることは「中道」といわれる。また、大乗仏教にとって、空の自己限定とは、ブッダの慈悲の具現化を意味するものでもあるといえる。それは、空であるところのブッダが、自らを説法する存在として限定する、空の側からの働きかけなのである。
- 沖縄工業高等専門学校の論文
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