extra-transferenceの解釈について : 心的外傷の再演としてのextra-transferenceの解釈(VI.原著論文)
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概要
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Strachey, J.が歴史的意義を持つ論文において「転移解釈のみが変化を生み出す」と定式化して以来,転移解釈の重要性や機能に関しては盛んに論じられ,その研究も数多く存在する。一方,extra-transferenceの解釈に関する検討は数える程しか存在しない。精神分析的指向を持つ精神療法家はセッションにおいてextra-transferenceの解釈を多かれ少なかれしているであろう。治療行為としてのextra-transferenceの解釈がいがなる意味および機能を持つのかということについてさらなる議論がなされる必要があると思われる。私はこの論文の臨床素材として,ある20代の女性との精神療法過程を取り上げた。彼女は父親による性的虐待の既往を持ち,精神医学的には解離性障害と診断された。治療経過の中で,外傷の再演が治療関係の外側で活発に生じた。私は当初,extra-transferenceの解釈をしていたが,彼女には変化が生じなかった。あるセッションで私は外傷の再演が私への転移感情の行勧化であることに気付き,転移解釈を試みたが,それもやはり彼女に変化をもたらすことはなかった。彼女に変化が生じたのは私が解釈すること自体が彼女の投影同一化にからめとられており,外傷の再演となっているという転移状況を治療的に取り扱ってからであった。その後,外傷の再演は治療関係の中に収納され,彼女は解釈を用いることが出来るようになっていった。彼女との精神療法過程においてextra-transferenceの解釈をすることがいかなる意味を持っていたのかを検討し,extra-transferenceの解釈の持つ多様な治療機能について考察した。そして,治療者が治療の場で生成する多様な層に対して「自由に漂う注意」を向けることの重要性を主張した。
- 神戸大学の論文
著者
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