人工魚礁の蝟集魚類と摂餌生態 : 漁場施設の魚類増殖効果に関する研究-III
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概要
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人工魚礁に蝟集する魚類の摂餌状況と,人工魚礁由来の餌料動物との関係を明らかにする目的で,海洋環境の異なる瀬戸内海日生町沿岸(日生町沿岸域)のD.L-4.1〜-4.3mと日本海能登町沿岸(能登町沿岸域)のD.L.-9.3mに設置されている人工魚礁を対象にして,2004年から2006年にかけて定期的に,魚類潜水目視調査,漁獲調査,蝟集魚の消化管内容物調査を実施した。潜水目視調査,刺網およびかぶせ網による漁獲調査の結果から,人工魚礁に蝟集していた魚種は,日生町沿岸域では29種,能登町沿岸域では48種で,魚種数は両海域ともに夏季に多かった。蝟集量は,日生町沿岸域ではクロダイが,能登町沿岸域ではスズメダイ,キュウセン,チャガラが優占種であった。漁獲調査では,目視観察では確認されなかった魚種が両海域を合わせて刺網で9種,かぶせ網で5種が確認された。また,かぶせ網では魚礁単体に着生した海藻群落に潜在している魚類を定量的に採捕することができた。人工魚礁に蝟集していた魚種のうち,魚礁性の強いカサゴ,メバルおよびクジメの計51個体の消化管内容物を調べ,本調査と並行して実施された人工魚礁とその周辺域に分布する餌料動物の分布調査の結果との関係を検討した。その結果,カサゴは,魚礁部材に着生する付着動物群を多く捕食しているが,季節的には人工魚礁に生育した海藻類の葉上動物,周辺のプランクトンや底生動物を捕食していた。メバルはプランクトンや付着動物群を多く捕食していたが,底生動物や葉上動物も利用していた。クジメは付着動物群,底生動物の捕食が多く,葉上動物やプランクトンも利用していた。したがって,魚礁性の強いカサゴ,メバルおよびクジメの3種ともに,主に人工魚礁および周辺に生息する節足動物門,環形動物門多毛綱などの餌料動物を捕食しており,人工魚礁に生息している小型動物が,蝟集魚類の重要な餌料となっていることが明らかになった。
- 2009-02-15
著者
-
伊藤 靖
財団法人漁港漁場漁村技術研究所
-
中野 喜央
財団法人漁港漁場漁村技術研究所
-
藤澤 真也
財団法人漁港漁場漁村技術研究所
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伊藤 靖
財団法人 漁港漁場漁村技術研究所
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中野 喜央
財団法人 漁港漁場漁村技術研究所
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伊藤 靖
財団法人漁港漁場漁村技術研究所第2調査研究部
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