宍道湖堆積物中の有機物の分解と有機炭素濃度(<特集>地球における炭素の循環)

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汽水域堆積環境における有機物の分解の程度と堆積物の有機炭素濃度を検討するため,水柱での有機炭素フラックスと柱状堆植物試料中での全有機炭素濃度(TOC)の分布を調べた.宍道訓中央域のセジメントトラップ法による有機炭素フラックスは,最大で夏季0.192gCm^<-2>day^<-1>,冬季0.179gCm^<-2>day^<-1>であり,これまで報告されている湧昇のない海洋沿岸域とほぼ同様の値を示した.また,セジメントトラップで得られた粒子状物質のTOC(平均6.2%)と堆積物表層(0-0.5cmの褐色層)のTOC(平均2.46%)との差分から,有機物は堆積物表層の酸化的環境下(O-0.5cmの褐色層)で,堆積後数年間で約60%が分解されているものと考えられる.また,下位2.5-20cmの堆積物(暗縁灰色層)中でもTOCは連続して減少しており,これが全て分解によると仮定すれば最大で70%が100〜200年間に分解したと考えられる.総合すると,約20cm以下の堆積物には平均でNew productionの約15%,基礎生産量の2-3%がそれぞれ保存されたことになる.宍道湖では1630年代に斐伊川の流入によって湖水が"淡水"から"海水"に変化したことが分かっている."海水期"の堆積物は,相対的に高い硫化物硫黄濃度(1.19〜3.0%)と小さい中央粒経値(4μm)によって,"淡水期"と区別された."海水期"の堆積物のTOC(1.19〜2.20%)は,"淡水期"のそれ(0.72〜1.0%)よりも約2倍の高い値を示した.この堆積場におけるTOCの規制要因には,基礎生産性のほかに有機物の分解率と堆積速度の変化が関係しているものと考えられる.
地学団体研究会の論文
1994-07-25

宍道湖堆積物中の有機物の分解と有機炭素濃度(<特集>地球における炭素の循環)

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